好きな人に「好き」と伝えるのはひどく難しい。



 さっきから私の心臓はもし今エレベーターに乗っていたら、一緒に乗っている人にまで聞こえてしまうんじゃないかってくらいどきどきしている。何とかして気持ちを落ち着けようと応接室のドアの前ですぅ、と深呼吸してから逃げ出したくなる想いを抑えながらドアをノックしようとしたら、突然背後から声がした。

「ねえ」

「は、はい!」

びっくりして振り向くとな、なんと、雲雀さんがいた。

「何か用?」

「あ、はい………あ、あの、雲雀さん」

「何?」

「あ、あの………」

言わなきゃーーーーーー

「すき、です…私、ひばりさんの、ことが、好き、なんです」

「…………………………」

ゆっくり見上げると雲雀さんがじっと私を見ていた。ーーー目が、怖い。

「ごめんなさい!」

そう言うと私は走り出した。いつの間にか涙まで零れていた。

やっぱり無理だったんだ。そりゃ、そうだよ、ね。他の子と同じですれ違ったときに挨拶する程度で話したことなんてないし。そんな子に告白されたって困るだけだよねーーーーー

、待ちなよ」

「わっ!」

いきなり後ろから手首を掴まれてそのまま応接室まで連れて行かれた。

「あ、あの、ほんとにごめんなさい!すみません!」

「ちょっと静かにしなよ」

「は、はい………」

「僕は怒ってなんかいないよ……………………むしろ、嬉しい」

そ、それって…

ばっ、と顔を上げると雲雀さんが少し困ったような表情をしていた。頬も心なしか赤い。

「ひ、雲雀さ…わっ」

掴まれたままの手首を引っ張られて雲雀さんの胸に倒れ込む形になる。

「僕も……君が好きだよ」

そう言いながら雲雀さんが私をぎゅっ、と抱きしめた。その言葉にさっきとは違う涙が私の頬をつたっていく。それに気付いたのか、雲雀さんは優しく頭を撫でてくれた。それが嬉しくて、私も雲雀さんの背中に腕を回した。