「恭弥、今日一日私に触ったら駄目だからね!」
「…は?」
「それじゃっ!」
珍しくが朝に応接室に来たと思ったらいきなりそう言い残して行ってしまった。慌てて追いかけようとしたものの、運悪く朝のHRの予鈴が鳴ってしまった。まぁそんなのはどうでもいいのだけれど、に後で拗ねられてしまうのは困るから、とりあえずソファに座り直してここ数日の事を思い出してみる。だが、の言葉の理由になりそうな事は全く思い当たらない。何か忘れているのだろうかと手帳を開いたとき、ある事に気がついた。
「なるほどね……」
昼休みになっていつものようにが応接室にやってきた。
「恭弥〜」
「、ちょっとおいで」
「ん?」
僕の手が届かない辺りで立ち止まろうとしたの腕を少し乱暴に引けば、すぐに僕の胸に倒れ込む格好になる。そのまま抱きしめるとがばたばたと暴れ始めた。
「恭弥!触ったら駄目だって言ったじゃん!」
「あぁ、それなら嘘なんでしょ?だって今日はエイプリルフールなんだから」
「ばれちゃったか…」
が少し残念そうな顔をした。
「、何でこんな事したの?」
「だって……たまには恭弥を慌てさせたかったんだもん。いつも私ばっかり恭弥にどきどきさせられてるみたいで悔しかったから……」
ああもう恥ずかしいよ、とが僕の胸に顔を埋めた。本当に可愛い。
そんな事しなくたって僕はいつだって君に慌てさせられているんだよ?君がソファでうたた寝しているときの無防備な寝顔とか、抱きしめたときの柔らかさとか髪の匂いとか、僕に愛してるよっていうときの表情よかに僕はいつだって心を乱されている。君には見せないように余裕ぶっているだけだ。そんな事は恥ずかしくて言えないけれど。
「僕はいつもを愛しているよ」
そう言う代わりにの耳元でその言葉を囁いたらの耳がみるみるうちに真っ赤になって、ワイシャツがきゅっ、と掴まれた。僕は鼓動が早くなるのを気付かれたくなくてにキスをした。