恭弥は後ろから抱きしめるのが好きだ。紅茶をいれてるときとかぼんやり窓の外を眺めているときにもしてくるから、こっちの心臓に悪くてやめて欲しいのだけれど恭弥の匂いと抱きしめられているときの心地よさに負けてしまって結局彼のなすがままになっている。
今みたいに恭弥の部屋に二人きりのときは、恭弥は私を自分の足の間に座らせて私の髪を触って時折それに口付けたりしていて、私はただ恭弥の体温を背中に感じながら彼の手を弄んだりしている。
「ひぁっ」
突然首に生暖かいものーーー恭弥の舌だーーーが触れて身体がびくん、と跳ねた。
「…何考えてたの?」
恭弥が少し不機嫌そうな声でそう言った。その理由が可愛くてくすくす笑っていると彼は少し拗ねたように腰の辺りにまわしていた腕にぐっ、と力を込めて耳を甘噛みした。
「やっ……」
「何がおかしいの?」
「いや、恭弥はやきもち妬きだなぁって」
「うるさいな」
恭弥に無理矢理後ろを向かされて唇が触れたと思ったら、恭弥の舌が少し強引に私の唇を開かせて口の中に入ってきた。
「んんっ………っ………」
恭弥の方へ無理矢理振り向く格好になっているせいかいつもより息苦しくなってきて、恭弥の手をきゅっ、と掴むと少しして唇が離れた。
「っもう!!苦しいからこの体勢は嫌だって言ったのに!」
「じゃあーーー」
そう言うと恭弥は私を抱えあげて自分の真正面に下ろした。
「がしてよ」
「え?何でそうなるの?」
「いいから早く」
恭弥が少し怒ったような声で私を急かす。鋭い眼に射抜かれるような心地がした。
「わ、わかったよ……する、するから、目、閉じて」
「嫌」
「な、何でっ」
すると恭弥は意地悪な笑みを浮かべた。
「がどんな顔してるのか見えなきゃ意味ないでしょ。早くしないとお仕置き三割増しだから」
「それはっ…」
「じゃあ早くしなよ」
さっきより少しだけ不機嫌そうな声に促されて私はきゅっと目をつぶって彼に口付けた。
少しして唇を離すと恭弥が唇をぺろりと舐めた。
「たまにはキスされるのも悪くないね…またしてよ」
「っ…知らない!」
急に恥ずかしくなってきて彼に背を向けると後ろから抱きしめられて唇が耳に触れるか触れないかの距離で囁かれた。
「今度はいつも僕がしてるキスでね?」